++文章修行家さんに40の短文描写お題++

+目次+

 

 00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。

 
 01. 告白
 02. 
 03. 卒業
 04. 
 05. 学ぶ
 06. 電車
 07. ペット
 08. 
 09. おとな
 10. 食事
 
 11. 
 12. 
 13. 女と女
 14. 手紙
 15. 信仰
 16. 遊び
 17. 初体験
 18. 仕事
 19. 化粧
 20. 怒り
 
 21. 神秘
 22. 
 23. 彼と彼女
 24. 悲しみ
 25. 
 26. 
 27. 芝居
 28. 
 29. 感謝
 30. イベント
 
 31. やわらかさ
 32. 痛み
 33. 好き
 34. 今昔(いまむかし)
 35. 渇き
 36. 浪漫
 37. 季節
 38. 別れ
 39. 
 40. 贈り物
 



                                    ≫≫≫ 配布元:文章修行家さんに40の短文描写お題







 00. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。

名前:新橋うみ
サイト名:あるがままに。
一言:がんばります! でも時々変なものが混じってます(笑)。

09/06 完結しました! 実に四年もかかっちゃいました!(爆)
    少しは描写の鍛錬になった……かな?
    お目通しありがとうございます(^^*

 01. 告白  【68文字】

「実は、僕……」
 目の前の彼女が迫る。
 期待に満ちた、双方の瞳の宝石が光を放つ。
 心臓が痛い。口が乾く。
 勇気を振り絞り、一言。
「僕、女なんだ」



 02.   【66文字】

娘がドアから現れた時、椅子に座っていた夫婦が立ち上がる。
 沈痛な面持ちで答えを待つ二人に、彼女は微笑んだ。
「病気、ちゃんと治るってさ」



 03. 卒業  【66文字】

「じゃあな。今までお世話になったな」
 彼の部屋には、溜めてきた漫画雑誌がいくつか積まれていた。
 その高さは、彼の漫画人生の長さを物語る。



 04.   【68文字】

 何度も小さなバックの中身を確認し、鏡の前で真剣に自分を睨む。
 最終チェックを終えると、陽子は玄関へと一歩踏み出した。
 新たな人を求める旅へ。



 05. 学ぶ  【65文字】

「いつも遅くなってすまない。残業が長引いて」
 そのスーツが不自然によれているのは、また他の子と
遊んでいたの証拠なのだと、最近学んだ。



 06. 電車  【66文字】

 無機質なリズムと共に、よれよれになった服を着た人々
を乗せて、電車は闇の中走り出す。
 窓から見える変わらぬ夜景に、思わずため息が漏れる。



 07. ペット  【68文字】

 尻尾をふりながら、ヨチヨチこっちへやってくる。
 白い毛をふくらませ、尻尾をふりふり。
 小さな瞳に光が宿る。
 私はその小さな羽毛を優しく撫でた。



 08.   【66文字】

「あなたみたいな人嫌いだから」
 と彼女は一言。
 わざと視線を避け、俯くその姿。
「知ってるよ」
 嘘をつく時の君の癖を見分けるのが、僕の癖だ。



 09. おとな  【67文字】

 彼はとても背が高い。
 体格も肉付きが良く、ガッチリしている。
 また性格も温厚。とても信頼度が高い男だが。
「俺、サンタになりたい」
「知らん」



 10. 食事  【66文字】

 トーストの匂いがよだれを促す。
 更に卵焼きとベーコンを乗せると油がジュワっと
染み込み、耐え切れず一口。
 爽やかな酸味が、脳に朝を告げる。



 11.   【66文字】

 目の前には、新たな世界の断片。
 陳列する活字達が、私達を想像の宝庫へと導く。
 時に楽しませ、悲しませ、驚かせて。
 ほら。
 すぐ、そこにある。



 12.   【65文字】

 母の頭から、小さな突起が二つ出る夢を見た。
 妙な気分で台所へ行くと、そこに眉を吊り上げ
仁王立ちした母。

 なんと。
 予知夢は実在したのだ!



 13. 女と女  【69文字】

「私の方が大きいわね」
「嘘ね。私の方がボリューム満点」
「こっちの方が弾力があるのよ」
「私のは良い肌色してんのよ」
「そのプリン本当に肌色?」



 14. 手紙  【68文字】

 握りしめるペンが思わず滑る。
 机一点に集中し、次第に顔が紅くなるのは、
襲う蒸し暑さだけが原因ではない。
 苦心して書き上げた、一言。
 「好きです」



 15. 信仰  【66文字】

 『幸運を呼ぶ奇跡の数珠!
 あなたの願いを玉に書く!
 あとはバラバラにして、夜空に埋めるだけ!
 光って綺麗!
 超簡単! 絶讃発売中!



 16. 遊び  【62文字】

 砂の城を残したまま固まった砂場。
 草に絡まり役目を無くしたブランコ。
 少しの力で崩れる脆い鉄棒。

 あの頃の幻影も、錆びれて消えた。



 17. 初体験  【68文字】

 心臓が鷲掴みにされ上へ引っ張られる。
 風が皮膚を裂き耳元で叫びを上げる。
 地面が迫る!
 脳みそが潰れる!

 ――ジェットコースターは、もう御免だ。



 18. 仕事  【65文字】

 寂れた暗い作業場に男一人が汗を流す。
 突如、着信音が木霊する。
 『お父さん、お誕生日おめでとう!』
 携帯画面の光を受け、男の顔は輝いた。



 19. 化粧  【69文字】

 昔はよく、こうやって娘の頬を撫でたもの
だと母親は思った。
 そして今、皺だらけの手で、純白のドレス
に身を包んだ娘の頬に最後の魔法をかけていく。



 20. 怒り  【66文字】

 目に見えぬ炎が俺を支配し、全身の血が沸騰
するのを感じた。
 不敵に笑うあいつを前に、煮え切った脳が限界
を超え、俺は構わず拳を振り上げた。



 21. 神秘  【64文字】

 透明の風が吹き抜け、桃色の花弁が静かな月光
を背負って舞う。
 湖面がそれを受け取って波紋を作り、そこに存
在する小さな宇宙を揺らした。



 22.   【66文字】

 それは人の口から吐き出され、伝染病のごとく
人々の間を這い、爆発的に広がる。
 だが、その終着駅はいつも知らぬ間に訪れやがて
消滅していく。



 23. 彼と彼女  【67文字】

 彼はアイスを乗せたスプーンを彼女の口元へ
運ぶ。
 彼女はそれを舌で受け止め、陽だまりの甘い笑
顔を見せた。
 それが、あの兄妹のいつもの日課だ。



 24. 悲しみ  【65文字】

 水を掬うような、空回りしたやりきれない思いが
私を侵食する。
 透き通った私の身体と同じように、心も皆すか
すかで消えてしまいそうだった。



 25.   【68文字】

 頭上には無数の緑の器が日光を受け止め、溢れた
光が地上へとおちる。
 一筋の光を浴びながら、一輪の花は一人ぬかるんだ
地面にしっかり足を伸ばす。



 26.   【66文字】

 心電図がお別れを告げた。
 家族に見送られた男の子が大事にしていた恐竜の人形だけが、
淡々とその様子を見守っていた。
 もうすぐ、夜が明ける。



 27. 芝居  【66文字】

 彼の目は空気を求める金魚の如く彷徨っていた。
 そんな口で「愛してる」だなんて、安すぎる。
 私は偽の笑顔を作り、背後のナイフを握りしめた。



 28.   【66文字】

 身体中が軋んでいた。
 動かすだけで、金属音がする。
 鼻に付けられた清浄機が、呼吸の替わり。
 心臓の位置には、精密機器。

 生身が、恋しかった。



 29. 感謝  【65文字】

「ありがとう」
 その言葉だけで胸が熱くなり、やる気が湧いてくる。
 介護の仕事は重労働だけど、その言葉を受け取る回数なら
誰にも負けない。



 30. イベント  【66文字】

 頭に斧を刺した姿で近所を徘徊する。
 身に纏う黒いローブは血まみれだ。
 適当な家のインターホンを押し、一言。
「trick or treat?」



 31. やわらかさ  【64文字】

 そっと指を触れると、餅のような弾力があった。
 優しく抱きしめた。力強い熱が腕に伝わる。羽毛布団のような感触。
 新たな命の誕生だった。



 32. 痛み  【68文字】

 右腹に走る激痛。
 僕は地面で呻いた。
 奴は微笑む。振り上げた足を僕の腹に押しつけて。
 更に駆け巡る痛みが全身を襲う。
 心だけが悲しく泣いていた。



 33. 好き  【62文字】

 隣に視線を遣れば、夕陽に輝く彼の横顔。
 繋いだ手からは、大きなぬくもり。
 いつまでも大切にしていたくて、私はぎゅっと握りしめた。



 34. 今昔(いまむかし)   【65文字】

 娘は笑う時、常に小さな八重歯が覗く。
 成人した今でも見ることが出来、その度に父の胸が熱くなる。
 どうか、この先も変わらずに居てほしい。


 35. 渇き  【67文字】

 まるで、砂漠に一人取り残された気分だ。
 ぎらぎらした周りの視線に汗が止まらない。
 口々に噂する声は私の心に砂嵐を起こす。
 誰か、私に、水を。



 36. 浪漫  【61文字】

 憧れの勇者が剣を片手に、魔王へ立ち向かっている絵の表紙。
 すっかり手垢にまみれてボロボロな絵本を、僕は未だに手放せずにいた。



 37. 季節  【65文字】

 電車の外の風景が、白色から色鮮やかなものへと変化していたことに気付いて驚いた。
 桜色に染まる木々を見送ると、自然とため息が出た。



 38. 別れ  【65文字】

 電車の扉が閉まる直前に、私は彼の背中を押してあげた。
 窓越しでスミレのような笑顔を作る彼に、私は向日葵に負けない笑顔を返してやった。



 39.   【63文字】

 もっと上手くなりたい。
 誰かの心に響くような、素敵な文を綴っていきたい。

 そんな願いを筆に込めながら、今日も私は、物語を紡ぎだす。



 40. 贈り物  【69文字】

おばあちゃんの遺影の前で、私は左手首にある腕時計に触れた。
 すっかりサイズの小さくなった贈り物は、未だに時を刻んでいる。
 これからも、ずっと。





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